【Album Review】Odesza _ 『In Return』(Beat Records / COUNTER RECORDS)
まずは真っ先にSound CloudからでもHype Machineからでも良いからこのOdesza(オデッザ)の音源を聴いてみて欲しい。ほぼ全曲キラー・トラックと言っていい猛烈にキャッチーなメロディ(大半のトラックでボーカルがフィーチャー)と最高に格好いいBPM110前後を基調にした、上げ過ぎずでもダウンテンポ過ぎでもない程良い塩梅のビートにぶったまげるに違いない。
Shy Girls、Zyra,そしてMadelyn Grantといった昨今のR&B隆盛を巧くキャプチャーした最高なゲスト・ボーカルのセレクションも冴えまくっている。まるで最盛期のMobyとBonoboやFour Tetがブレンドしたような無敵ぶり。特に「Say My Name」、「All We Need」、「Sun Models」の破壊力はホントにとてつもないレベル。
ODESZA - Sun Models (feat. Madelyn Grant) - YouTube
この新しい起爆剤感をプンプンに漂わせたアルバム『In Return』をドロップしたオデッザ。Hype Machineやそのネタ元でもあるHiliiy Dillyといった海外ブログをチェックしている人なら頻繁に取り上げられチャートにランクインしている彼らなので既に知っているかもしれない。僕もそのクチだ。
彼らはシアトルから出てきたまだ大学を卒業して間もないクレイトン・ナイトとハリソン・ミルスの二人組。ナイトはクラシックとジャズ・ピアノのレッスンを6、7年間も受けており、Four Tetのようなアンビエントなエレクトロニカを好む一方、ミルスはヒップホップ・ヘッズだったのことで彼らの音楽は二人の好みのエッセンスが入り交じっている。
ODESZA - My Friends Never Die - YouTube
実はオデッザは既に自主制作で事実上の1stアルバム『Summer’s Gone』(#リンクでフル・ストリーム可能)を2012年にリリースしている。その時からHype Machineのような新興メディアに留まらず、企業とのタイアップなども舞い込むほど話題になっていたし、コーチェラ含むビッグ・フェスにもアメリカを中心に多く出演した。そしてEPのリリースなども挟みながら、Counter Recordsとサインしての公式デビュー作『In Return』のリリースに至ったという経緯。
一部のメディアではそのポップさとドリーミーな音像を表して、「ドリーム・ウェーヴ」なんていう呼称を使ったりもしているが、彼らのオデッザの音楽が本当に魅力的なのは、”思い切りよくポップを振りかざしている”ところ。
まだ大きなリスナーを獲得する以前から思い切り良く振り切れるこの感じは、たった一夜で多くの人にリーチする可能性が当たり前になった「インターネット以降の世代」の特徴なのかもと思ったり。同じ強みを持っているように見える日本のトーフビーツの言葉を借りるなら「何の手も借りないポップス」という言葉がしっくりくる。
エレクトロニック・ミュージックに過度なストイックさだったり、逆にEDM的な大仰さのイメージのせいで敬遠している人がいたら、そんな人にこそオデッザを聴くことを薦めたい。間違いなく新しい扉を開いてくれることを約束する。「今はトリプル・プラチナとかそういうことは起きない時代」と他人事な二人だが、果たしてそうだろうか。僕が思うにオデッザの音楽の射程距離は熱心なエレクトロニック・ミュージック・リスナーの枠よりずっとずっと遠く、広い。
ODESZA - All We Need (feat. Shy Girls) - YouTube
All We Need (ft. Shy Girls) - ODESZA - YouTube
注釈)
このレビューは結果的にレビューではなく紹介記事になったWEBマガジンQetic掲載原稿の元ネタ(というかレビュー想定で書かれたもの)になります。
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