【年間ベスト】2014年「 極私的」年間ベスト・アルバム _ 『恐るべき新世代たち』編
異常な豊作ぶりだったイギリス
『恐るべき新世代たち』という切り口を設けたかったのは正にHype Machineが理由。あまりにも沢山の素晴らしい名も知られていない(ググっても何の情報も出てこない)アーティスト/バンドを見つけることができたのが2014年だったからだ。
以下で挙げる3枚以外にもこれまで本ブログの「HYPE MACHINEで見つけた素敵な音楽たち」シリーズでも紹介してきたTom MischやLondon Grammar、Phoria等々一体どれだけ凄い奴らが潜んでんの?っていうくらいの充実ぶりで、中でもイギリスは傑出して才能を量産していたと思う。以下の3枚のうち2枚もUKからのバンド/アーティストだ。
『恐るべき新世代たち』を代表する3枚
・Glass Animals『ZABA』(Wolf Tone)
上半期ベストでも2位に選んでいたこのアルバム。個人的には残念な内容になってしまったAlt-Jの穴埋めをしてくれた存在でもあった。独創的で中毒性のある音像感。気持ち良く隙間があり、テクスチャがくっきりと浮かび上がる立体的な作り。メロウかつトリッピーなメロディと同時に踊れるグルーヴも兼ね備える。バンドは若いながらも既に豊富なサウンド・ボキャブラリを持ち、それを操るスキルがある。プロダクションのタクトをアデルを手がけたポール・エプワースが振るったことでオックスフォードのベッドルーム・プロジェクトに過ぎなかったこのバンドは化けに化けたと言っていい。「Pools」やファースト・シングルの「Gooey」,「Hazey」辺りを聴けば彼らの実力を堪能できるだろう。
<おすすめトラック:M3.「Pools」、M4.「Gooey」、M7.「Hazey」>
・HONNE『Warm On A Cold Night EP 』(Super)
彼らもUKはロンドンから。余程の日本好きなのかデュオ名は「本音(ほんね)」でジャケットも少し可笑しな日本語訳がプリントされている。Facebookなどを見ると品川のビジネスホテルみたいなところに居たりと何かしら日本と強いコネクションがあるのかもしれないが、詳細は不明。
音源はこの『Warm On A Cold Night EP 』に含まれる2曲と大名曲「The Night」を含めてもまだ数曲。だがクオリティはまさに圧倒的の一言。ゆったりとしたビートにスムースなシンセ、メロウなボーカルでインディーR&Bの文脈で語られることが多いが、オーストラリアのChet FakerやNYのNick Hakimあたりとも共振するテイストを感じる。とにかくフル・アルバムを早く聴きたい。ライブも観たい。2015年、ブレイクは確約されている。
<おすすめトラック:M1.「Warm On a Cold Night」、M2.「Baby Please」>
・Olivver the Kid『Freak EP 』(self-release)
ロサンゼルスを拠点にするシンガー、Olivver the Kid。Hilly Dillyによると同ブログも注目していたThe Neighborhoodというバンドの一員だったが、グループを脱退しソロ・キャリアに舵を切ったそうだ。 この名義で最初に注目を浴びた曲「Attica '71」はミゲルなどのテイストに近いR&BでHillyDillyのような耳の早いブログではかなり頻繁に取り上げられた。デビュー作となる『Freak EP 』は80年代のデペッシュ・モードのような質感のシンセ・ポップ風のプロダクションが前面に出てきた。刮目すべきは「Lucy (Hurt People Hurt People)」で、惜しくも昨年解散したスウェーデンの奇天烈デュオ=The Knifeを想起させるこの曲は、当面彼らをリプリゼントする一曲になるに違いない。同曲のアコースティック・ヴァージョンを聴けば、彼のソングライティング能力の確かさがより生々しく伝わるはず。本EPには収録されていないが「Purge」という曲でもピアノを主体にしたジャジーなソウル・バラッドを聴かせてくれる。おそらくソングライターとしての懐は深い。これからの展開が待ち遠しいアーティスト。
<おすすめトラック:M2.「Lucy (Hurt People Hurt People)」、M2.「Attica'71」>