【年間ベスト】2014年「 極私的」年間ベスト・アルバム _ 『2014年数少ない健闘した「ロック」たち』編
嘲笑の対象からの面目躍如?
過去に寄りかかった退屈で時代錯誤な嘲笑の対象となるジャンルの一つに落ちぶれてしまったロック。ある意味、堕していくロックに対するアンチテーゼとして発展してきたのが北米の地における「インディー・ロック」だと言うこともできる。「ロックはイケてないから」と多くのリスナーは事実、この呼称でリプリゼントされた音楽に吸い寄せられいつしかメインストリームとなった。
だがしかし、昨今その呼称とともに僕らに届く音楽は、時に知的だが複雑過ぎる。そんな風に思う人もいるに違いない。例えそれらが極めて質の高い音楽であることが事実でも。北米においてこの数年間、メインストリームのポップ音楽へと多くの人々が再び流入している事実にはそんな背景もあるのかもしれない。「いや、なんかさ繊細すぎんだよ、お前らさ」みたいな。ここでは2014年、そんなロックへの誤解を一蹴できるディスクを3枚紹介する。
「2014年数少ない健闘した「ロック」3枚
SPOON『They Want My Soul』(Republic)
「インディー・ロック」という言葉の檻に監禁されてきた感のあるこのSPOON。古典的なロックン・ロール、R&Bを踏襲し、名工=ジョン・ブライオンの力を借りた全曲捨て曲一切なしの『GaGaGaGaGa』、そして徹底したループ構造によるヒプノティックでミニマルな『Transference』で得た評価と音楽的財産を得て、この『They Want My Soul』でロックを「人々の元」へ連れて戻しにきた。ミニマルなパワー・コードとビッグなコーラス。冒頭のロック・トラック「Rent I Play」が何よりもそれを明確に表すハイライトだ。あなたが『GaGaGaGaGa』を愛する人なら「They Want My Soul」や「I Just Don't Understand」、『Transference』を愛する人であれば2曲目「Inside Out」にヤラれるに違いない。バンド自身の音楽的多面性を糧に音楽の歴史と接続しながら、聴くものを「ここではないどこか」へ連れて行く。10曲で40分弱、タイトでシンプルで分かりやすいのに豊か。そんな傑作だ。
<おすすめトラック>
M1. 「Rent I Play」==> SPOON - "Rent I Pay" [UNOFFICIAL VIDEO] - YouTube
M2. 「Inside Out」==> SPOON - "Inside Out" - YouTube
M8. 「I Just Don't Understand」==> Spoon - "I Just Don't Understand" - YouTube
Joel Baker『Every Vessel EP』(self-release)
英ノッティンガム出身のソウルフルな声を持つ(アクセントも強烈)22歳のシンガーソングライター=ジョエル・ベイカー。僕がHypeMachineを使い始めた極初期に見つけたアーティストでEPのタイトルにもなっている「Every Vessel Every Vein」は聴いた瞬間にハマった。ロックというよりはフォークだけどね。Jake Buggが好きならきっとこのジョエル・ベイカーも気に入るはず。ジェイク同様、彼は世界を真っ直ぐ見ることができる青年だ。前にも紹介したことがあるが公式ブログにあるジョエル自身の自己紹介文が最高なので改めて紹介しておこう。
I'm from Nottingham, UK, and moved to London 2 years ago to work in the House Of Commons. Rather than becoming a politician I ended up becoming a Singer-Songwriter.
I love lyrics that mean something.
I love music that makes you feel something.
I love Jimi Hendrix, Reggae Reggae Sauce, & Jesus.
Thank you for every single bit of support,
Love, j
<おすすめトラック>
M2. 「Every Vessel Every Vein」==> Joel Baker - Every Vessel, Every Vein at Reading Festival 2013 - YouTube
Benjyamin Booker『Benjyamin Booker』(Rough Trade)
「お前の神様は1994年に死んじまった/注射針と拳銃を持って」。間違いなくカート・コバーンのことだろう。そしてカートが出てきた頃よりもずっと複雑になった世の中でベンジャミン・ブッカーもまたフラストレーションを溜め込んでいる。全てが始まる前の再現性のない衝動。ガレージ・ロックが本当にガレージで録られていた頃のようにラフ。難しいことを言っても仕方ない。どうせどこに向かって、何があるのかわからない。ただ黙って、覚悟を決めた者のためにこのレコードはある。
<おすすめトラック>
M1. 「Violent Shiver」==> Benjamin Booker - Violent Shiver - YouTube
M3. 「Chippewa」==> Benjamin Booker - Chippewa - YouTube