【Live Report】ブルーボトルコーヒーとホステス・クラブ・ウィークエンダー
10回目の節目開催
ちょうど10回目の節目を迎えたホステス・クラブ・ウィークエンダー(以下、HCWとする)。 St.Vincentのグラミー効果なのか、ベルセバ効果なのかは未だ解せないものの、2日に渡って新木場スタジオコーストは超満員の賑わい。
と同時に同じ形態で10回の開催を経たことでいちオーディエンスとしては、正直マンネリ感を感じ始めたのも事実。ある種ラインナップが誰であろうと一定の顧客基盤を作ったと同時に今とコンセプトを変えずにこれ以上のスケールを安定して実現するのも難しいだろうし、持ち球的にもボチボチ同じアクトのローテーションが始まって段々ジリ貧に・・・なんていうシナリオも有り得るんじゃないかなーというネガティブな懸念がまずある。
それに加えて毎度次回開催のアナウンスがされるのが慣習だったが、今回は一切次回開催に関するアナウンスはなし。「10回を節目に一旦お休みでは?」という憶測もまことしやかに流れるなか、どうせなので仮にここで仕切り直すのだとしたら「HCWをこんな風にして欲しい!」という理想の姿を考えてみることにした。
Money Treeと先行投資の2本立て
先に結論から言ってしまうと
- Money Tree:より大規模(5千〜1万)の集客を目指す(SWSX的カンファ込の)複合イベント」
- 先行投資:ストイックに公式リリース前のアクトも含め欧米の最新を切り取ったピュアな音楽イベント(今のHCWのアクトをもっと無名アクトに寄せるイメージ)
の2本立て。 前者でスポンサード含め収益をきっちり上げ、よりリスキーでチャレンジングな後者に投資をしたいところ。 固定費の効率を考慮すると、同日にこの2種のイベントが近いロケーションで催される方が良いのだろう。(それこそEbisu Music Weekender的な感じでも)
”ブルーボトル・コーヒー”クラスタとHCW
そもそもどこからこのアイデアの着想を得たかというと、それは以下のツイート。
HCWの客ってブルーボトルコーヒーに並んでそうな人ばっかだなーw
— dai_no14 (@DaiNo14) 2015, 2月 22
「確かにブルーボトルコーヒー行きそうなクラスタとHCWクラスタってある程度被ってるし、親和性あるな。でも前者のクラスタのボリュームが圧倒的に大きいけど、実際そこまでpetetrate出来てないだろう」っていう肌感が「HCWはこれ以上スケールするにはどうしたらいいんだろ?」っていう問いにマッチしたという訳。
つまり、仮想”ブルーボトルコーヒー・クラスタ”をもっと巧いこと取り込むことができれば、今以上の規模と収益性を得られる可能性が何となくありそうだなと。 そして、仮にそこからの利益を未だ知られてない音楽と出会ってもらうことに投資できれば今よりもっと面白いイベントになるんじゃないかなと。
つまるところ、夏の大型野外フェスにはないHCWへの期待として、
- より高い頻度で海外の新しい音楽をまとめて手頃な価格で体験できる場
- 海外の音楽を一定以上の熱心さで自発的に開拓するクラスタ以外へも可能な限り広くリーチできる場
の2つがあるとしたら、やはり両者はある種トレードオフな部分もある。 現に今のHCWがこれ以上の規模を目指せば必然的に前者の比重は落ちてくるだろう。 だったらそのジレンマを解消すべく、パキッと「スケールと収益性を実現するイベント」と「先行投資イベント」に分けちゃえばいいのにという極めて単純な発想です。
まず”ブルーボトルコーヒー(「Money Tree」)”イベントはどうあるべきか?
- ターゲット:言うまでもなく「ブルーボトルコーヒー層」。年齢層は20-50代まで幅広そう。ここからは偏見丸出しだが『WIRED』とどこかの広告代理店の取り組みが奏功したおかげか(妄想です。笑)そこそこの収入と文化資本があるクラスタのはずだ。そうは言ってもこのクラスタも特別音楽にストイックなわけでも、実際ライブや音源にさほど資金を投下してるわけでは決してないのが現実だろう。つまり今のHCWではこのクラスタのマジョリティを呼ぶにはストイックすぎるし、クローズドすぎる。
- コンテンツ:まず音楽について。このクラスタが反応しそうな知名度や話題性のある「分かりやすい」アクトはどうしても必要。 今だったらサム・スミスあたりだろうか。 あとはファレルとかも刺さりそうだが、今のファレルだとちょっと人を呼べ過ぎちゃうかも。 この辺りのセレクトの塩梅は日本だとそもそも難しい&英米とのギャップがどんどん大きくなっているので、メディアとしっかりコンテクスト・メイクすることが必須。(それこそWIREDがうまくやっていたように)。
次にイベントの「場」自体のデザイン。今のHCWはとにかくサクッと一日で出来る限り多くのアクトを見てもらうってことだけにフォーカスしてるので、基本音楽以外のコンテンツは無に等しい。ブルーボトルコーヒー層を取るにはこれでは無理。食、ファッション、そしてWIREDやGQ、NewsPicks層とかと親和性が高そうなBiz/Yech寄りのコンテンツ(それこそSXSW的にね)もトークショー、カンファレンスなどを散りばめつつエエ感じにしないと音楽だけでは間違いなく続かない。
そしてロケーション。あの異常なまでに居心地の悪いスタジオ・コースト(単独公演なら構わないが、半日居るのはキツ過ぎ)を捨て、別のロケーションで空間設計からしっかりやるべきだろう。 キャパは5千~1万を想定。
と同時にターゲット層を見据えたコンテンツ集めだけが問題ではない。音楽以外のコンテンツと音楽自体をどう提示するかのコンテクストもメディアと一緒に戦略的かつ継続的に作っていくことが必須。それはイベント前後のPR的コミュニケーションだけでは絶対に実現できないと思う。
何より大切なのは集客できるのはどのアクト?という問いではなくて、音楽含めた核となるコンテンツを咀嚼して、ターゲット層がアタッチメントを持ち得るStory Telling/ Context Makingを丁寧かつ継続的に行うことだ。これはイベント興行主だけで出来ることではないので、今のHCWの運営の在り方とは全く異なる部分になると思う。
では”先行投資”イベントの方はどうあるべきか?
全体のイメージとしてはHype Machine主催のイベント=<Hype Hotel>の大物アクトを排した感じ。と言ってもHypeHotelで大物に該当するアクトが日本ではそもそも大物にはならないわけだが・・・笑。
- ターゲット:シンプルに従来のHCWクラスタ+より耳の早い人たちも
- コンテンツ:ピュアにまだ知られてない良い音楽。まずはターゲット層からのレピュテーションをしっかり得られるラインアップの実現が優先。とは言え、レーベル契約が未定くらいのフェーズにあるアクトも厚めにし、攻めのラインナップにしたいところ。 会場は500-1500程度のキャパシティで十分だろう。
で、実現出来るの?
と勝手にツラツラと希望を書き連ねてみたが、これを実現するには、
- 幅広いレーベル横断のラインナップ構成
- 「Money Tree」イベントと「先行投資」イベントのキャパをちょうどよく満たす会場が二つ以上近隣にあるロケーション
- 今のHCWとは付き合いがなさそうなスポンサー集め
- 幅広いコンテンツを音楽クラスタから遠い層も考慮して届けることができる企画力
- イベント全体の空間設計力
- 継続的なイベントとしてFeasibleにするための収益マネジメント
等おそらく大分現状からストレッチが求められそうな要件であることは間違いない。またこれまでの諸々の音楽イベント系の商習慣とはコンフリクトが起きることも色々とありそう。(実際、よく分からないけど。) まぁでもいろんなトレードオフを乗り越えて何かを実現するのがビジネスでもあるので、是非頑張って欲しい、ホステスには。今回書いたようなことを実現し得るコンテンツを持ってるのってHostessが筆頭なわけだし。是非、何とかしてくれませんかね?
最大の不安はそもそもこんなニーズ自体、ほとんど無いだろうということ(笑)。 でも需要なんて応えるものじゃなくて、創るものでもありますから。
と一切ライブのレポート無きエントリでした!