mr.novemberのブログ

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【Album Review】Disclosure 『Caracal』(Universal)

Caracal

今やUKのみならず世界のダンス・ミュージックを牽引することを期待される存在になったローレンス兄弟ことディスクロージャー。2010年代のイギリスが「ハウスの時代」を迎えたのは彼らが着火点。ケムズもアンダーワールドプロディジーも完全にしくじったアメリカ大陸で「正統派ハウスで覇者となる」というチャレンジを成功させたのも、今やアデルに比肩するポップ・シンガーとなったサム・スミスをフック・アップしたのも彼ら。そして正に今日、彼らはNYのマジソン・スクエア・ガーデンを思いっきり揺らしに行っているはず。

そんな彼らがセカンドをリリースする上で期待されたことは以下の3つに集約されていただろう。

  1. EDMを凌駕する即効性ばりばりのアゲアゲ路線(EDMでAviciiに正面から勝つ)
  2. UKアンダーグラウンド・ダンスミュージックのレペゼン(敢えて嫌な言い方をするとインディ・クレディビリティ的なものを保ちつつ、ネクスト・レベルを見せること)
  3. グローバル・ポップ・アクトとしてのダンス・ミュージック

結果として彼らの選択は3だった。と僕は見ている。そして少し物足りない結果になったとも。レイブもクラヴ・カルチャーも通過していないダンス・ミュージックとしてのEDM(#そういった「カルチャーとしての色」が脱色されてるからこそグローバルに受けたのだろう)と、ハウス、そして原体験としてのUKガラージが間違いなく源流にあるディスクロージャー。ポップの土俵において同じく四つ打ちである両者が勝負して、鮮やかにDisclosureがEDMに引導を渡すのを個人的には期待した(つまり1と3を同時にやってのけること)が、そうはなってくれなかった。

さてアルバムのほうはと言えば、一言で言うと益々ダンス・フロアでなく、スタジアムや巨大なホールが似合う作品。そして次々に招聘した旬なシンガーたちの「歌声」を中心に据え、明確に「聞かせる」>「踊らせる」アルバムになっている。当然のことBPMは120前後から100以下くらいに落とし気味で、「Fire Strarts to Burn」に該当するキラー・トラックは、ない。

集ったシンガーたちは、ザ・ウィークエンド、ロード、ミゲル、盟友クワブス、そしてサム・スミスと同世代を英米幅広く才能を結集させていると言って良いが、その成果は芳しくない。前作におけるラッチ」を超えるアンセムを担うことを期待されるはずのオーメンも正直フックが物足りない。

とひたすらネガティブなことを書いているのはアルバムの出来に満足ではないからではあるが、決して悲観はしていない。というのもこれは「次の一手」を一気に狭めてしまうほどの決定的駄作ではないからだ。ポップ・ミュージックの辺境の地=フランスでひたすらハウスに恋い焦がれた青年二人でしかなかったダフト・パンクが20年掛けてアメリカのブラック・ミュージックの芯部と遂に接続したその道のりを4、5年で到達してしまいそうなローレンス兄弟が今置かれているポジションは、今だどんなカードでも切ることが可能な特別な位置だということことに変わりはない。そしてアルバムもセールス的にはそこそこいくに違いない。

この若い兄弟が今得られているポジション/チャンスを使って何を成し得るのか。その答えが出るのはおそらくまだ先。つまり僕らにはまだ楽しみは残されている。嫌味ではなく、そう感じている。

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