mr.novemberのブログ

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【年間ベスト】2015年ベスト・アルバム _ 『グローバル・ポップ、ガチンコ勝負の頂上決戦』編

"Winner takes all"のグローバル・ポップ市場

インターネットが音楽産業に起こした構造的変化のひとつに「勝つものが益々勝つ」という現象がある(#その一方多様な音楽が可視化はされるようにもなっているのも事実)。そう、Winner Takes All。事実、レコード会社は益々制作だけでなく、マーケティング・コストにおいてもその回収を見込める極少数のアーティストに徹底的に集中投下させている。2015年、その象徴がアデルだったわけです。(#個人的には作品の質の割に売れ過ぎで、正にオアシスにおける『Be Here Now』現象だなと思っています。なので『25』については別途レビューを書く予定。)

それが良いか悪いかは別として、グローバルでトップクラスの才能にトップクラスの予算とトップクラスの制作陣を投入し、グローバル市場でガチンコに勝負。んできっちり儲けて次なる種に仕込む(XLレコーディングスはアデルを擁しているからこそエクストリームなアクトに投資が出来るわけですからね)。そういうマーケットがあるのは事実。好き嫌いは別にして。ここではそんなガップリよっつのメイン・ストリームの土俵において正に正面からポップたろうとした3枚をご紹介。あ、でもアデルは入ってません。悪しからず!!(笑)

・Justin Bieber『Purpose』

パーパス~デラックス・エディション(初回限定盤)(DVD付)

 調子こいたクソガキ問題児。音楽もセレブ・ゴシップも興味がない人からしたらそんなイメージでしかないだろう。僕もまぁそんな感じだった。そうした世間のパブリック・イメージを音楽の力で黙らせる。そんな気概を感じざるを得ない確かなクオリティ。メインストリームのトレンドであるベース・ミュージック/EDM的意匠をスクリレックス等を召喚することで、巧みに力を借りながらひたすら完成度を研ぎ澄ました。そして決して安っぽい派手さに頼らず内省的なリリックのトーンに合っているのも吉。

意外なことに初の全米1位シングルWhat Do You Mean?を皮切りに5曲目までの流れは素晴らしい。間違いなくアルバムのハイライトとなる名曲「Sorryは表面的にはセレーナ・ゴメスに向けられているのだろうが、ジャスティンを迫害し続けるメディアへのアイコンとしての葛藤のダブル・ミーニングになっている。にしてもキャリアがドン詰まる前に音楽で自らを立証してみせるなんてカッコイイじゃないか、全く。

Purpose

Purpose

 

 

・LÉON『Treasure EP』

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 スウェーデンから突然現れた新星。そのポテンシャルを説明するにはhype machineでもバズりにバズったTired of Talkingの一曲でも十分だろう。制作には大物が控えているということは今のところなさそうで、 LEONとして話題になる前に知り合ったたAgrin Rahmaniというスウェーデン人プロデューサーと制作を進めている模様。

ソウル・テイストなボーカリゼーション、程よくエレクトロニックかつポップなプロダクション、圧倒的な吸引力のあるフックを持つメロディ、男女のリレーションシップに関する赤裸々なリリック、つまり王道ではあるのだが他とは一線を画する完成度と説得力。今年にはデビュー・フルアルバムがリリースが噂されてる。その時こそが彼女がどこまでその声を届けられるのかの試金石となるだろう。
 

・Oh Wonder『Oh Wonder』

Oh Wonder

 こちらはロンドンから現れた新星デュオ。hypemachineを始めとしたストリーミング・サービスから新たな才能がフックされることは珍しくもなんともなくなってきたのが欧米のここ数年のマーケットだったけれど、アルバム1枚分クオリティを担保できているアクトは少ないのも事実。が、Oh Wonderはそれをやりきった。しかも昨年1年間を掛けて毎月新曲をリリースするという風変わりだが、実に今っぽいコミュニケーションをリスナー/メディアと続けながら、しっかりと素晴らしいフル・アルバムを作り切った。捨て曲はない。

アイドル的眼差しを振り払いつつバンドとしての総合力を集結したポップネスで振り切ったチャーチズの新譜も良かったけど、僕はこのデュオのポップネスへの期待の方が大きい。二人が活動開始前に立てたという以下の4つの目標はなんと既に達成されてしまった訳だが、そのピュアネスとポジティビティをこの後どこまで拡げることが出来るか、それを見守りたいと思う。(#デュオとしてのライブは昨年11月が初めてでしたが、今月早くもアメリカでコナン・オブライエン・ショーに出演します。早い早い。)

  • 「私たちは素晴らしい曲を書く故にパブリッシング契約を獲得する」
  • 「私たちは私たちのアートによって評価される、引く手数多のソングライターである」
  • 「私たちは全てのことが可能だと感じ、『イエス』に満ちた人生を送る」
  • 「音楽が私たちに素晴らしい生活を与えてくれ、そのおかげで私たちは世界中を旅して回る」
Oh Wonder

Oh Wonder

 

 

《おまけ》Oh Wonderへの拙インタビューを昨年12月に行いました。興味を持った方はぜひ!

 

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