【新・Weekly Music】HYPE MACHINEで見つけた素敵な音楽たち_17
今週のイチオシ
Jordan Bratton "Prisoner(feat. Chance The Rapper)"
ガーディアン誌によると2013年の時点で18歳なので現在は20歳ということになるこのJordan Bratton。とにかく余り情報がないが、NYのロングアイランドを拠点に活動している(おそらくアフリカン・アメリカンの)R&Bシンガー/プロデューサー。
ASAP、Frank Ocean以降を感じさせるジョーダンは父親のMPC2500を使ったのが音楽制作のきっかけらしい。RCAレコードは彼のライブを観た翌日にサインをし、遂に5月12日にRCAからの公式デビューEP『Youth』をリリースした。('13年に14曲入りミックステープ『The Grey』をリリース済み)
デビューEPに収録されているこのチャンス・ザ・ラッパーをフィーチャーしたトラックは垂涎の出来。耳の穴かっぽじって聴け!!
今週の次点
Alessia Cara "Here"
こちらもまだ18歳。カナダはオンタリオ州、ブランプトンという都市出身のシンガー。いわずもがなこの曲はPortisheadの「Glory Box」を大胆にサンプリングしている。そして原曲をダメにするどころか、圧倒的なクオリティで見事この名曲を使い切った。
Alessaはフルネーム、 Alessia Caracciolo。すでにDef Jamとサインしていて、これからが期待されるところ。Def Jamと聞いて期待されるのは、リアーナを育てあげたソングライター陣とどんどん組んでいくことでこの才能が一気に開花すること。
本曲「Here」はFADER誌でのインタビューによると、
「パーティーに行って自分がどんなにそれが嫌いか分かって、その翌日に書いた曲。」
だと言う。ちょっとNirvanaの「Smells like Teen Spirit」みたいなエピソードだ。
またProtisheadの「Glory Box」を聴いたことがない不届き者は今すぐ聴くように(笑)。
【新・Weekly Music】HYPE MACHINEで見つけた素敵な音楽たち_16
今週のイチオシ
Julio Bashmore "Holdin' On(feat. Sam Dew)"
ジェシー・ウエアのデビュー作でも決定的な仕事をしたプロデューサー/トラックメイカー、Matthew WalkerことJulio Bashmore(フリオ・バシュモア)が遂に7/10にアルバムをリリースする模様。やっと!!?それに伴い発表されたトラックがこちら。最高のファンク/ディスコ・ナンバーに仕上がっており、プレフューズ73の新作のベスト・トラックのうちの一つである「Infared」でもフィーチャーされているSam Dewのボーカルのハマりも最高。
サンプリングにしか聴こえないトラックは「サンプリング風」のプロダクションという噂もあり、真偽の程はわかりませんが、まぁとにかく最高です。
今週の次点
Oh Wonder "Livewire"
以前、一度紹介をしたロンドンの Anthony & Josephine による男女エレクトロ・デュオ、Oh Wonder。絶対2015年にドッカン来るグループです。はい。以前はWonder Wonderという名前だったらしいですが、コンビ名をマイナー・チェンジしてからは大当たり。なんか芸人みたいですね(笑)。
毎月1曲ずつ新曲を発表していくシリーズを継続中で5月発表のトラックがコレ。もうOh Wonder節といってもよいメロウな曲になっています。過去の楽曲も全くハズレなしですので、これを機に是非聴いてみてください。
そして待望のデビュー・アルバムも9/4リリースに決まったようです。
【告知】WEBマガジンQeticにPrefuse73の特集記事を寄稿しました!
ギレルモ・スコット・ヘレンの代表的な名義であるプレフューズ73が4月末に4年ぶりの新譜をリリースしたことに際して、彼の20年近いキャリアを総括する記事をQetic誌に寄稿させて頂きました。
本当に久々の快作となった新作ではヒップホップを軸にエレクトロニカからアンビエント/ドローンまでを繋ぐスコットの集大成的な美しいビートを聴くことができます。
今回の記事の一番のポイントは、「スコットにとってのルーツであるヒップホップの本質とは何か?」という点でスコットがいかにその軸からブレることなくキャリアを積んできたかを過去作品を改めて聞き返してもらえると新鮮な発見があるんじゃないかと思っています。
彼がヒップホップのステレオタイプな類型に捕らわれることがなかったのは、彼がヒップホップも勿論のことあらゆるシーンに対して「アウトサイダー」であったことが強く関係しているんだろうなと個人的には思っています。
ではGWも終わりが近づいていますが、じっくり読んで頂けることを期待しています。
【新・Weekly Music】HYPE MACHINEで見つけた素敵な音楽たち_15
今週のイチオシ
Andy Shauf "I'm Not Falling Asleep"
『Either/or』の頃のElliot Smithのあのヴァイヴを想起させるカナダのシンガーソングライター、Andy Shauf。エリオットだけでなく、正統派バカラッキアンからPaul Simon、またそれらの系譜にあるよりコンテポラリーなアーティストであるA Girl Called Eddyなどを愛する人も必ず気にいるはず。 地元カナダはレジーナの自宅で丁寧に織り込まれたさりげなく美しい音のテクスチャーを感じて欲しい。
今週の次点
Alabama Shakes "Don't Wanna Fight"
も日うすぐ発売される新作『Sound & Color』を一足先に聴きましたが、出来はマジで最高。2015年にこれより良いロック・アルバムを出すのはかなりシンドそうなくらい。プロデューサーは、Lana Del ReyからConor Oberstまで手がけ、HAIMのダニエルの元彼でもあったBlake Millsを選んだ。アルバムは4月21日のリリース。
【Live Report】ブルーボトルコーヒーとホステス・クラブ・ウィークエンダー
10回目の節目開催
ちょうど10回目の節目を迎えたホステス・クラブ・ウィークエンダー(以下、HCWとする)。 St.Vincentのグラミー効果なのか、ベルセバ効果なのかは未だ解せないものの、2日に渡って新木場スタジオコーストは超満員の賑わい。
と同時に同じ形態で10回の開催を経たことでいちオーディエンスとしては、正直マンネリ感を感じ始めたのも事実。ある種ラインナップが誰であろうと一定の顧客基盤を作ったと同時に今とコンセプトを変えずにこれ以上のスケールを安定して実現するのも難しいだろうし、持ち球的にもボチボチ同じアクトのローテーションが始まって段々ジリ貧に・・・なんていうシナリオも有り得るんじゃないかなーというネガティブな懸念がまずある。
それに加えて毎度次回開催のアナウンスがされるのが慣習だったが、今回は一切次回開催に関するアナウンスはなし。「10回を節目に一旦お休みでは?」という憶測もまことしやかに流れるなか、どうせなので仮にここで仕切り直すのだとしたら「HCWをこんな風にして欲しい!」という理想の姿を考えてみることにした。
Money Treeと先行投資の2本立て
先に結論から言ってしまうと
- Money Tree:より大規模(5千〜1万)の集客を目指す(SWSX的カンファ込の)複合イベント」
- 先行投資:ストイックに公式リリース前のアクトも含め欧米の最新を切り取ったピュアな音楽イベント(今のHCWのアクトをもっと無名アクトに寄せるイメージ)
の2本立て。 前者でスポンサード含め収益をきっちり上げ、よりリスキーでチャレンジングな後者に投資をしたいところ。 固定費の効率を考慮すると、同日にこの2種のイベントが近いロケーションで催される方が良いのだろう。(それこそEbisu Music Weekender的な感じでも)
”ブルーボトル・コーヒー”クラスタとHCW
そもそもどこからこのアイデアの着想を得たかというと、それは以下のツイート。
HCWの客ってブルーボトルコーヒーに並んでそうな人ばっかだなーw
— dai_no14 (@DaiNo14) 2015, 2月 22
「確かにブルーボトルコーヒー行きそうなクラスタとHCWクラスタってある程度被ってるし、親和性あるな。でも前者のクラスタのボリュームが圧倒的に大きいけど、実際そこまでpetetrate出来てないだろう」っていう肌感が「HCWはこれ以上スケールするにはどうしたらいいんだろ?」っていう問いにマッチしたという訳。
つまり、仮想”ブルーボトルコーヒー・クラスタ”をもっと巧いこと取り込むことができれば、今以上の規模と収益性を得られる可能性が何となくありそうだなと。 そして、仮にそこからの利益を未だ知られてない音楽と出会ってもらうことに投資できれば今よりもっと面白いイベントになるんじゃないかなと。
つまるところ、夏の大型野外フェスにはないHCWへの期待として、
- より高い頻度で海外の新しい音楽をまとめて手頃な価格で体験できる場
- 海外の音楽を一定以上の熱心さで自発的に開拓するクラスタ以外へも可能な限り広くリーチできる場
の2つがあるとしたら、やはり両者はある種トレードオフな部分もある。 現に今のHCWがこれ以上の規模を目指せば必然的に前者の比重は落ちてくるだろう。 だったらそのジレンマを解消すべく、パキッと「スケールと収益性を実現するイベント」と「先行投資イベント」に分けちゃえばいいのにという極めて単純な発想です。
まず”ブルーボトルコーヒー(「Money Tree」)”イベントはどうあるべきか?
- ターゲット:言うまでもなく「ブルーボトルコーヒー層」。年齢層は20-50代まで幅広そう。ここからは偏見丸出しだが『WIRED』とどこかの広告代理店の取り組みが奏功したおかげか(妄想です。笑)そこそこの収入と文化資本があるクラスタのはずだ。そうは言ってもこのクラスタも特別音楽にストイックなわけでも、実際ライブや音源にさほど資金を投下してるわけでは決してないのが現実だろう。つまり今のHCWではこのクラスタのマジョリティを呼ぶにはストイックすぎるし、クローズドすぎる。
- コンテンツ:まず音楽について。このクラスタが反応しそうな知名度や話題性のある「分かりやすい」アクトはどうしても必要。 今だったらサム・スミスあたりだろうか。 あとはファレルとかも刺さりそうだが、今のファレルだとちょっと人を呼べ過ぎちゃうかも。 この辺りのセレクトの塩梅は日本だとそもそも難しい&英米とのギャップがどんどん大きくなっているので、メディアとしっかりコンテクスト・メイクすることが必須。(それこそWIREDがうまくやっていたように)。
次にイベントの「場」自体のデザイン。今のHCWはとにかくサクッと一日で出来る限り多くのアクトを見てもらうってことだけにフォーカスしてるので、基本音楽以外のコンテンツは無に等しい。ブルーボトルコーヒー層を取るにはこれでは無理。食、ファッション、そしてWIREDやGQ、NewsPicks層とかと親和性が高そうなBiz/Yech寄りのコンテンツ(それこそSXSW的にね)もトークショー、カンファレンスなどを散りばめつつエエ感じにしないと音楽だけでは間違いなく続かない。
そしてロケーション。あの異常なまでに居心地の悪いスタジオ・コースト(単独公演なら構わないが、半日居るのはキツ過ぎ)を捨て、別のロケーションで空間設計からしっかりやるべきだろう。 キャパは5千~1万を想定。
と同時にターゲット層を見据えたコンテンツ集めだけが問題ではない。音楽以外のコンテンツと音楽自体をどう提示するかのコンテクストもメディアと一緒に戦略的かつ継続的に作っていくことが必須。それはイベント前後のPR的コミュニケーションだけでは絶対に実現できないと思う。
何より大切なのは集客できるのはどのアクト?という問いではなくて、音楽含めた核となるコンテンツを咀嚼して、ターゲット層がアタッチメントを持ち得るStory Telling/ Context Makingを丁寧かつ継続的に行うことだ。これはイベント興行主だけで出来ることではないので、今のHCWの運営の在り方とは全く異なる部分になると思う。
では”先行投資”イベントの方はどうあるべきか?
全体のイメージとしてはHype Machine主催のイベント=<Hype Hotel>の大物アクトを排した感じ。と言ってもHypeHotelで大物に該当するアクトが日本ではそもそも大物にはならないわけだが・・・笑。
- ターゲット:シンプルに従来のHCWクラスタ+より耳の早い人たちも
- コンテンツ:ピュアにまだ知られてない良い音楽。まずはターゲット層からのレピュテーションをしっかり得られるラインアップの実現が優先。とは言え、レーベル契約が未定くらいのフェーズにあるアクトも厚めにし、攻めのラインナップにしたいところ。 会場は500-1500程度のキャパシティで十分だろう。
で、実現出来るの?
と勝手にツラツラと希望を書き連ねてみたが、これを実現するには、
- 幅広いレーベル横断のラインナップ構成
- 「Money Tree」イベントと「先行投資」イベントのキャパをちょうどよく満たす会場が二つ以上近隣にあるロケーション
- 今のHCWとは付き合いがなさそうなスポンサー集め
- 幅広いコンテンツを音楽クラスタから遠い層も考慮して届けることができる企画力
- イベント全体の空間設計力
- 継続的なイベントとしてFeasibleにするための収益マネジメント
等おそらく大分現状からストレッチが求められそうな要件であることは間違いない。またこれまでの諸々の音楽イベント系の商習慣とはコンフリクトが起きることも色々とありそう。(実際、よく分からないけど。) まぁでもいろんなトレードオフを乗り越えて何かを実現するのがビジネスでもあるので、是非頑張って欲しい、ホステスには。今回書いたようなことを実現し得るコンテンツを持ってるのってHostessが筆頭なわけだし。是非、何とかしてくれませんかね?
最大の不安はそもそもこんなニーズ自体、ほとんど無いだろうということ(笑)。 でも需要なんて応えるものじゃなくて、創るものでもありますから。
と一切ライブのレポート無きエントリでした!