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mr.novemberのブログ

暇と退屈、そして音楽の楽しみ方。

【年間ベスト】2015年「 極私的」年間ベスト・アルバム _『絶滅が危惧される”ギター/ベース/ドラム” バンドの生き残り』編

元の居場所へと還っていく「インディー」

この10年のアメリカの音楽産業は「インディー」という鉱脈を掘り返すことで飯を食ってきたと言ってもよいだろう。ただグランジ・ブームの時の反省からか、食い尽くされ、焼き畑化される前にここ数年をかけて「インディー」は元のサイズに還っていったと僕は見ています。元来「捏造」されたマーケットではないゆえ、自分たちの居場所を適切なサイズで守ることが出来るのも米の音楽カルチャーの懐の深さだと改めて思わせてくれたのも事実です。

そしてリバイバル以後のいいとこ取りハイブリッド音楽としてのR&Bでも書いたように運営効率の悪い「バンド」という形態も相成ってか、気づいてみればメインストリームからはいわゆるギター・バンドがすっかり見当たらなくなってしまいました。

ここで紹介するのはそんな絶滅危惧である「バンド」というフォーマットで各々の形で説得力を持った作品をリリースした2組であり、共にセールス、評価双方において結果を残しました。どちらのバンドも00年代以降の「ロックをリバイバルとしてしか体験してない世代」の耳にはきっと強烈に響くはずです。

 

・Sleater-Kinney 『No Cities To Love』

No Cities to Love
10年ぶりに帰ってきたスリーター・キニー。きっと「Surface Envy」のギター・リフを聴いたら往年のファンは涙することを約束する。と同時にこのアルバムは最もフレッシュに、そして相変わらずシンプルだ。変わらない2本のギターのアンサブルとジャネットのドラムが鳴り響いている(このバンドはベースレスだ)。集大成でありながらも、エントリーにもベストなアルバム、そんな言い方をしてもいいかもしれない。過去作でいうと『Dig Me Out』や『All Hands On The Bad One』に近い耳障りかもしれない。

聴いているだけで感電するかと思うほど「エレキ・ギターって電気使ってるんだよな」という感じが音に出ている。ジャネット・ワイスの手数の多いドラムも程よいふくよかさと残響感を含みながら尖りまくったギター2本を支えている。リユニオンに気負った感じはなく、ど頭から最後まで走り抜ける10曲32分。

スリーター・キニーは「Price Tag」からも分かるように子供、家庭、ミドルエイジ、そういった「現実」を覚悟を持って正面から受け止めている。若ぶりも、悪ぶりも、イケてる振りもしない。その意味ではロックにおいて「ミドルエイジ」と始めて相対することに成功したザ・ナショナルと双璧を成しているのかもしれない。兎にも角にも予想の遥か上を行く嬉しい嬉しい復活作。

No Cities to Love

No Cities to Love

 

 

・Alabama Shakes 『SOUND&COLOR』

サウンド&カラー

まぁとにかく音だ、音。ギターの弦とはこう鳴るもんだと言わんばかりのアタック音の凄み。本当のギターの音なんて分かってないんだけど、きっとこれがその音だとしたり顔で語りたくなるような芳醇な響き。そして今聴くとデビュー作は随分荒削りなもんだったなと思うほど、全体のプロダクションは洗練され、各楽器の鳴りの捉え方は研ぎ澄まされた。

ブルーズへの愛に溢れた一聴するとレトロ&シンプルなスタイルは、ある種難易度が増しすぎて取っつきにくさが目立ち始めたインディー・ロックが後景へと退いていく中、すんなりと受け入れられたのかまさかの全米一位をも獲得してしまった。が、それはアメリカ音楽史の正史を真っ当に参照点としていることだけが理由ではないだろう。2015年、それはアメリカにおいてケンドリック・ラマーが様々な「カラー」が同居することによる受難を告発した年でもあったわけだが、アラバマ・シェイクスはそれを祝福することにしたからだ。

現実を知れば知るほど、積み重なっていく歴史を考慮すればするほど、何かを短絡化して叫ぶことが空虚で危険なことだと分かってしまい、何かを言い切れなくなってしまう。そんなこんがらがった中でもアラバマ・シェイクスは「Hold On!(持ち堪えろ)」と、そして「Give me your all love!」と歌い切った。ブルーズやソウルが紡いできた常套句でもあるこれらのフレーズを2015年でしか出来ない形で、2015年のサウンドで更新したということがこの作品の価値なんじゃないだろうか?

サウンド&カラー

サウンド&カラー

 

 

 

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