mr.novemberのブログ

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【年間ベスト】2015年「 極私的」年間ベスト・アルバム _ 『ポストEDMとしてのダンス・ミュージック』編

産業化が過ぎた快楽=EDMからの離脱

とにかく強引にフィジカルに訴えかけてこうようとするEDMには流石に世界中が食傷気味になったのか、僕が触れた2015年のダンス・ミュージックは、EDMに明確に引導を渡すような革新や派手さを持ち合わせた何かは無かった代わりに、静かに過去の遺産と接続しながら深みを与えてくれるような作品が多かったような印象があります。'10年代のダンス・ミュージックはUKが牽引してきたという言い方も過言ではないと思いますが、そんなUKを引っ張る若き中心人物と新たな才能の2作品をここでは紹介しようと思います。

・Jamie XX 『In Colour」

イン・カラー

ジェイミー自身は足繁く世界中でDJプレイをしに飛び回ってはいるが、その内向的な性格ゆえか、アシッド・ハウスにもジャングルにも間に合っていない世代ゆえか、ここには「現場」としてのフロアの香りは全くと言っていいほど感じられない

90年代含めた過去へのノスタルジアという想像力を目一杯含みつつも、この6、7年のキャリアの中で得た果実を全て注ぎ込むことで紡ぎ出された理想としてのダンス・ミュージックがここにはあるのだ。だが決して過剰にはならず、より少ないことでより多くのことを成している

EDMがひたすら右肩上がりにカタルシスを上昇させようとしている中、ジェイミーはもっと様々なベクトルの感情を委ねることができるようなリズムとサウンドを提供してくれる。そして最高なのはジェイミーの音楽には「どんな最高のパーティーもいつかは終わる」ということを知っている、そんな切なさが漂っているところだ。

イン・カラー

イン・カラー

 

 

・Tom Misch『Beat Tape2」

Beat Tape 2

こちらもジェイミーXXと同様「上半期ベスト」でも選出した作品。Floating Pointsとも迷ったが、今後のポテンシャルも踏まえた期待を込めた選出にした。トム・ミッシュは南ロンドン出身のわずか20歳のマルチ・インストゥルメンタリストにしてトラック・メーカーだ。そして彼は歌うことすら出来てしまう。それ故か彼のトラックへのアプローチは「ビートメイキング」というよりは「コンポージング(作曲)」といった方が正しそうなのはこのメイキング映像からも感じ取れる。

テクノ、ヒップホップ、ジャズと様々な要素を少しずつ横断しながらzero7的な洗練されたスムースさが彼のトラックの特徴。ただ是非、余り先入観を持たずに彼の作品を聞いて欲しい。曲毎に少しずつ様々なエレメントが織り込まれているのが聴こえてくるだろう。Floating Pointsのビートにはもはや飽和しつつあるいわゆるディラ・ビートの影響は見られないが、トム・ミッシュのそれには影響の影が絶大だ。ただ生の楽器を普段に利用している分、ただの援用には留まらないシナジーが生まれている。

トムのサウンド・メイクは基本的にはミニマルでありながら、必ずさりげなくスウィート・スポットを突いてくるのがその才能の稀有なところ。その真髄はIn the Midst of Allで最も顕著に感じ取ることが出来るはずだ。

Beat Tape 2

Beat Tape 2

 

 

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