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【年間ベスト】2014年「 極私的」年間ベスト・アルバム _ 『すべての人々に語りかけ、チャートにも居座れたポップ・ミュージック』編

他者に分かりやすく語りかける音楽としてのポップ・ミュージック

僕はポップ・ミュージックの大きな役割の一つは「皆が思ってはいるけれどなんだかモヤっとしていることを"すっと"腹落ちさせること」だと思っている。 そしてすぐに話が通じそうな人にだけ話しかけることではなく、一番話の通じそうにないところへと語りかけること。そのために資本の荒波に飛び込むこと。それをやってのけるのがポップ・ミュージックではないか?

今、世界的にその胆力/ガッツがあるのは女の子ばかりのようだ。ここで紹介する4人のアーティストのうち3人はソロの女性シンガー(もう一人はセクシャル・マイノリティ)である。どのアーティストも複雑な時代に複雑なことをシンプルかつ大胆に言い切る力、そして同時にチャートのど真ん中に居座る音楽的なパワーを持っている。

ちなみにだが4人目に紹介するRyn Weaverを僕は2015年の間徹底的に推そうと決めています。(昨年でいうところのBANKS)

 

すべての人々に語りかけ、チャートにも居座れたポップ・ミュージック』4枚

1. Taylor Swift『1989』(Big Machine Records) 

1989~デラックス・エディション(DVD付)

まるでThe VerveBitter Sweet Symphonyのように「変われること」について真正面から歌う「Shake It Off」がやはりハイライト。でも"Bitter Sweet〜"みたいにウダウダ言っていない。テイラーにはもっと覚悟がある感じ。以前との変化を象徴するように音楽的には大胆にエレポップを導入。かといってサウンド自体に何か目を見張る先進性があるわけではない。 承認欲求の絡み合った泥試合が繰り広げられ続ける世界において「全員に自分が自分であることへの許可なんて貰っていられない」とまるでThe WhoBaba O'Reiley同様のメッセージを感じる。そして彼女はひとりじゃない。LORDEや最近ではHAIMと頼もしい仲間たちが次々と彼女の隣を歩き始めている。

<おすすめトラック>
M1. 「Welcome to NewYork」==>

 

M6. 「Shake It Off」==>



 

2. Jessie Ware『Tough Love』(PMR) 

Tough Love -Deluxe/Ltd-

ダブステップ以後におけるR&B」を象徴するようにデビューしたジェシー・ウエア。極めてオーセンティックだったデビュー作から売れっ子プロダクション・チーム=BenZelを起用して、決して無理はせずに自然な発展として明確にポップに舵を切ったセカンドがこの作品。テーマは「報われない愛」について。ありふれたテーマではるが30歳で長い恋愛から遂に結婚を迎えたジェシー自身について、そして自分以外のストーリーを巧みに織り交ぜながら「誰もが関連づけられる」感情を歌っている。「それが求められているように感じるから」*1ジェシーは言う。「人々のために歌うアーティストでありたい」という彼女のポップ・アーティスト宣言といってもいい大きな第一歩。それを表すように自信漲るボーカルはより前に出て、アルバム全体にポジティブなヴァイヴが漂う。晴れやかで清々しく、力強い。

<おすすめトラック>
M2. 「You& I Forever」==>


M10. 「Champagne Kisses」==>



 

3. Sam Smith『In the Lonely Hour』(Capitol) 

In the Lonely Hour

単独レビュー*2、そして上半期ベスト*3のときに予想したようにアメリカは彼に持っていかれた。そしてあれよあれよという間にグラミー6部門ノミネート(授賞式は間近)。来日公演も発売直後にソールド・アウトした。Disclosureにフックアップはされはしたが、彼の本質はシーンの潮流にある訳じゃない。ソウル、ゴスペル、ディスコ、R&Bオーセンティックな音楽フォーマットを存分に活用しながら「報われない巨大過ぎる愛」「こぼれ出すエモーションを届けること」。歌詞だってある意味クリシェに溢れている。雑に言ってしまえば極めて「俗っぽい」訳。がしかし、それゆえにここまで広く受け入れられた。この立場と才能(特に声)を糧にどこまで行けるかは彼とリスナー、そしてメディア次第。

<おすすめトラック>
M1. 「Money On My MInd」==>


M2. 「Stay With Me」==>

 

4. Ryn Weaver『Promises EP』(Interscope Records) 

Promises

2014年、僕はBANKSにベットしある意味当てた。そして15年はこのRyn Weaverにベットする。1年ほど前からHypeMachineでチェックしており「My要注意人物リスト」入り。しかもなんかプロダクション似てるなーと思っていたらまさかのジェシー・ウエアのセカンドと同じくここでもBenZel。いい仕事してますねーー! 本作『Promises EP』の発売とともに早速アメリカの国民的TVトークショー<David Letterman Show>にも出演。そしてそのパフォーマンスはあまりにも完璧だった。

女優を目指したが夢半ばで断念、音楽にシフトした22歳の彼女。見事な歌唱力と圧倒的な存在感は正直軽くBANKSを飛び越えて一気にブレイクの予感。衣装をヴァレンチノが提供したり、既にグラミーのプレ・パーティーでライブをしたりと恐らくマネジメントはかなり大きいところがバックアップしているということだろう。 本デビューEPは4曲構成。全くもって捨て曲なしどころかいずれも傑作級の完成度。 先に言っておこう、2015年はRyn Weaverの年になる。 

<おすすめトラック>
M1. 「Promises」==>

M2. 「OctaHate(Live at David Letterman)」==>

M3. 「Stay Low」==>

 

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